薬局・薬店に行くと、「○○胃散」というお薬があります。これは胃病の散剤、つまり胃のための粉ぐすりです。この成分はどれも炭酸水素ナトリウム、俗にいう重曹が入っています。炭酸水素ナトリウムは水に溶けてアルカリ性を示し、出過ぎた胃酸を中和します。
 炭酸水素ナトリウムは中和力が強いので、あとで胃酸が反動でかえって多く出るようになるという説もあります。しかし、それは毎回のように大量を飲み続けた場合のことで、ふつう胃散1回分の炭酸水素ナトリウム量は1g以下ですから、まず問題はありません。
 胃袋の上の方はなぜか胃底部といいますが、ここに食事中に飲み込んだ空気や食べ物から発生するガスがたまりやすいのです。炭酸水素ナトリウムを飲みますと、胃酸との中和で炭酸ガスが発生し、それがげっぷとなって食道に上がるとき、一緒に空気を外に出します。これがなんともいえない爽快感になるのです。メントールを配合したものが多いのも、このさわやかさを期待したものです。
 このほか成分としては炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウムなども目立ちますが、これらも制酸剤の仲間です。もっとも胃痛は胃酸過多だけが原因とは限りませんが…。
 胃酸には生薬を配合したものもたくさんあります。苦いゲンチアナや芳香のあるウィキョウ、ケイヒ、辛いショウキョウなどがよく見られます。苦い、辛いという味覚は食欲を増進します。オブラートで包んだのではその効果も台なしです。胃を大事にしなかった罰だとあきらめて、せいぜい苦味をかみしめてください。
 なお、胃散はいわば一時しのぎのお薬であり、これで胃は丈夫になりません。

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