お薬に効き目があることと、お薬として使えることとは必ずしもイコールではありません。いくら効くといっても、副作用が強くては迷惑なのです。たくさんのお薬のタマゴ達が、惜しまれながらも埋もれていくのです。
 こうしたタマゴ達の中には、DDSの工夫によって日の目を見るものがあります。技術の進歩は、捨てられていたものの中から思わぬ宝を掘り出すことができるのです。
          
DDSとは
 DDSは、ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System)の頭文字をとったもので、デリバリーとは「配達」とか「引き渡し」という意味です。「薬物送達システム」などと訳されていますが、体内でお薬を適切なときに適切なところに適切な量を運ぶための工夫をいいます。お薬の外見は従来のものとまったく変わりませんが、最近の薬にはDDSの技術がぎっしりと詰め込まれているものがたくさんあるのです。
          
DDSのいろいろ
成分が出てくるのをコントロールするもの
 お薬といえば1日3回がふつうですが、中には1日1回や2回というものもあります。回数が少ない方がのむ側としては楽ですよね。
 また、糖尿病の薬であるインスリンを、血糖が上昇したときにすかさず出るような工夫が研究されています。(これは健康な人が自然に行っていることです。DDSの理想は、人のホルモン分泌コントロールといえます。)
目的とするところだけ作用するもの
 炎症が起きたのでお薬を飲みました。お薬は全身に行きわたります。しかし、このお薬は炎症のところにさえ行けばよいのです。心臓や肝臓に行ったお薬はムダであるばかりか、副作用の危険を大きくするともいえます。そして、お薬を病気のところに送り込み、そこからそのお薬が周辺に広がるころには無害のものに変化してしまえば、副作用はほとんど心配なくなります。こうした技術も少しずつ実用化されているのです。
その他、利用効率を上げるもの
 本来のお薬が苦くてとても飲めなかったり、吸収が悪かったりするとき、化学構造を変えてそれらのマイナスを解消し、体内でもとに戻るように工夫します。消化液で分解されてしまう薬を、水に溶けない形にして分解されなくするのもここに入ります。
今後の展望
 お薬の効率を高めるDDSは、今後ますます進むでしょう。錠剤の1〜2割は、あの小さい中に何らかのDDSの工夫がなされていると思われます。これが機能を十分に発揮するのは適切な保管、正しい使用が前提です。錠剤が飲みにくいといってかみ砕いたりすると、せっかくのDDSが無意味になってしまいます。

 

 

 

 

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